『江戸から見た原発事故』(塩見鮮一郎著)
2014-10-15


あの時こうしていたらの近代日本史

Chap.1 幻影エドの再現(明治の滑稽)

Chap.2 震災後の恐怖(大正の明暗)

Chap.3 近代超克ゲーム(戦前昭和の陰鬱)

Chap.4 市民と政治のたわむれ(戦後昭和の変転)

Chap.5 ついに君を見たか(平成の地獄)

>福島の原発事故の凄まじさ・・・それまで考えていなかった脅威が
 現れる・・・廃炉までにどれほどの年数と金額がかかるのか、原発
 事故の全体像がわからない。とんでもないことが進行しているの
 に、その意味が汲み取れない。底なし沼なのか、足が底につかな
 い。知りたくないという恐れがつきまとい、中途で思考が停止する。
 
 何がこのような限界状況を日本に齎したのか。

 「江戸」にカウンター・ポイントを置き、今の社会状況をハッキリさせ
 よう。江戸〜明治〜大正〜昭和〜平成・・・
 戦後の日本は維新後の日本を繰り返した。いずれも結末は暗転
 し、原子核の凄まじい惨禍に到る。

>平成の地獄

 なにもかもが坂を転がり始めた。ちょうどミッドウェイ海戦で、暗
 雲がたれこめてきたみたいだ。企業が利益を継続して上げるた
 めには、時には回り道をしなければならないと教える人はもうい
 ない。すべての企業で賃金を切り詰めたものだから、人々が消
 費に向ける金額は激減した。

 最も安易な道を探して、日本の会社は漂流した。「一国経済主
 義」を忘れると、その国は決まって退潮する。低賃金を求めて
 アジアに工場を移転するのは、相手国の富を収奪するうまみが
 あるからだ。かつての女工哀史と変わらない。

 アジアでの低賃金労働の利用は、日本国内に跳ね返って、賃
 金を抑制する作用を齎した。膨大な数の「非正規労働者」が巧
 妙につくり出され、国内にアジア的な労働市場が生まれた。
 軟弱地盤・液状化地面に立つ高層ビルが今の日本の経済であ
 る。

 「強兵」の果てに「廃墟」が訪れたように、今度は「富国」の先に
 「破綻」が待っていないだろうか。
[3.11]
[読書]

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